2018.08.28
キッザニアの窓の「初耳仕事図鑑」に、代表原田のインタビュー記事が掲載されました。
代表の原田が『キッザニアの窓』という、キッズとその親世代に向けたWEBメディアの取材を受けました。
テーマは「初耳仕事図鑑」。
社会の変化が加速するなかで、新しい肩書や珍しい肩書を持った人々にインタビューを行い、その仕事について紹介するという特集です。この度データサイエンティストに焦点を当てたいということで、原田にお声掛け頂きました。
▼▼「初耳仕事図鑑vol.2 データサイエンティスト」の記事はこちら▼▼
「データサイエンティスト 原田博植さん」
近年、働き方が多様化する中で、珍しい肩書きで仕事をしている人が増えてきました。その方たちに普段どんな仕事をしているのか、話をうかがう初耳仕事図鑑。第2回目は「データサイエンティスト」という肩書きで働いている、株式会社グラフ代表の原田博植さんです。
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社会の土いじりのような仕事。
「データサイエンティスト」と言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージをしますか? 科学者だから、白衣を着ていたり、たくさんのモニターに囲まれて仕事をしていたり......。
そんなことを思いながら、この日、原田さんのオフィスを訪れると、なんだかカジュアルな印象の職場。......あれ?想像していた感じと違う!そもそもデータサイエンティストとは、何ですか?
「まず、この肩書きが生まれた背景から説明しましょう。データサイエンティストとは、シリコンバレーで生まれた言葉です。数年前から『ビッグデータ』という言葉をよく耳にするようになりましたよね? その理由は、昔と比べて、通信速度が速くなり、情報の種類も増えて、データを蓄積できる量が増えたからなんです。それと同時にビッグデータを整理し、分析した結果を経営戦略に活かす仕事が生まれるようになりました。それが、データサイエンティストです」
原田さんは、実は私たちの生活もデータが支えていると教えてくれました。
「例えば、ATM。みなさんもお金を下ろしたり、振り込んだりしていますよね。その裏にも整理されたデータがあります。簡単にお金のやりとりができるのもデータがあるからこそ。データは、インフラであり、社会の土なんです。だから、『データを整理して分析することは土いじりのようなものだ』と、私の仕事を説明する時によく言っています」
今や、データのない仕事はないと断言する原田さん。たとえ、小さなお店であっても、データを活用して経営戦略を考えているそうです。
土を整えると、どんな実でも作れる。
具体的には、どのような仕事をされているのでしょうか?
「これは、運送会社さんの案件です」
「各営業所の従業員やドライバーの人数、配達時間や範囲などのデータを計算したものです。ここで重要になるのが、お客さまが目指しているゴールです。利益を出したいのか、ドライバーの負担を減らしたいのか。ゴールが違えば、課題も違います。もちろん、データの分析方法も、そこから提案する経営戦略も変わっていきます」
土いじりをするにしても、トマトのような野菜を育てたいというお客さまもいれば、ワインの木を植えたいというお客さまもいるかもしれないと原田さんは教えてくれました。
「多くの仕事は、まずデータを整えることから始めます。企業は膨大なデータを持っていますが、そのままだと使えません。つまり、土が乾いていたり、岩が転がっていたりしていたら、何も作れませんよね? なので、まずはデータを整理して土壌づくりをする。そうすることで、経営課題に対しての答えを導くための準備ができます」
なるほど。そうやって、正解を見つけていくんですね?と聞くと「いえ、正解を見つけるというわけではありません」と意外な答えが返ってきました。データサイエンティストという仕事を理解し始めたと思っていたのに、一体どういうことなのでしょう。
わかった!と思わないことが重要だった。
提案するものが、正解ではないとは、どういうことなのでしょうか?
「人は、分析していく過程で、答えを予測してしまうものなんです。たぶんこうかなと思うと、そっちへ流されてしまうもの。そうならないために、『中庸』の姿勢を大切にしています。中庸とは、孔子の論語の中に出てくる言葉で、要するに『真ん中』という意味。最後まで偏らないことが、分析には重要なんです」
確かに、自分が期待している答えに寄せてしまうことって、自分で振り返ってみてもあるかもしれません。まさに今、データサイエンティストって、「つまりは、こんな仕事かな?」と自分の中で"寄せて"しまいました。
「それに、現在得られるデータから最適解を導いているだけなので、時代が変わればそれが正解かどうかはわかりません。あくまで課題に対しての最適な答えなんです。正解を発見した!と思ったら、分析は終わりなんですよ。データサイエンティストは、永遠にわかったと思ってはいけないと思います」
それは、究極の客観的視線を持つことなのかもしれません。日々、変化するデータは、生きものであり、分析するときは、常に問いを持つことを心がけているそう。中立を保ち続けるなんて、精神的にもハードだなと思って聞いていると「流されないようにするのは、大変ですよ。でも、データサイエンティストは、ずっと変化し続ける場所に身を置き続けることができます。何が最適な答えか、ずっと探し続けられるというのは、楽しいですよ」と教えてくれました。
なんで生きているのか、不思議だった。
きっと原田さんは子どもの頃から、答えを解き明かしていくことが好きだったのでは?と、また予測しながら聞いてみると「小学生の頃は、哲学的なことを延々と考えていましたね」と、またまた意外な答えが返ってきました。え!?小学生が哲学ってどういうことなのでしょうか?
「知的好奇心の塊だったというか(笑)。幼い頃って、何でも不思議だったじゃないですか。人ってなんだろうとか、なんで生きているんだろうとか、そんなことばかり考えていました。もちろん、両親や先生にも問いかけていましたよ。でも、正解が見つかることはなかったですね」
世界や自分に対して懐疑心が強かったと、笑いながら理由を教えてくれました。きっと、それが知的探求心に目覚めた原点なのでしょう。気になることの理由を突き詰めることは、まさに分析です。大人に意見を聞くことも、データを収集しているとも言えます。好奇心旺盛であるからこそ、常に問い続けることを楽しめるのかもしれません。
データは、新しい言葉になっていく。
小学生の頃から、問いを楽しんでいたのであれば、好きだった教科は算数なのでしょうか?
「いえ、やっぱり国語ですね」......え、やっぱり?
「データも言葉なんです。アルゴリズムもプログラミング言語で書きますから。実は、プログラミング言語も小説などと一緒で、書く人の性格や特徴が出るんですよ。使う人のことを考えてプログラミングされたアルゴリズムだなとか、わかりますから。データの世界も人間味が出るんです」
このプログラミング言語には、日本語や英語、中国語のようにいろいろな言葉があるそうです。しかも、次々と新しい言語が生まれているとか。進化していくスピードがとても早いのです。では、今の子どもたちが大人になる頃には、データサイエンティストという職業はどうなっているのでしょうか?
「もっと当たり前の存在になっていると思います。今のデータサイエンティストとは働き方も違ったものになっているでしょう。例えるなら、今、飛行機会社で働いている人は、飛行機を発明したライト兄弟ではないですし、つまり全員がエンジニアではないですよね。それと同じで、データサイエンス会社といった企業が生まれ、社内にはプログラミング言語を使わずにデータ分析業務を担っている人もいて、社会の基盤をつくっていると思います」
よく人の感動は理屈じゃないと言われてきました。でも、原田さん曰く、映画学校や音楽学校があるように、感動のアルゴリズムもデータ化されていて、人は人の心を知りたいがために、データという「言葉」を尽くしているとのこと。データサイエンティストとは、世界でまだ解明されていない心の機微を見つけていくという夢のある仕事でした。
最後に、データサイエンティストにはどんな人が向いているのか聞いてみると「絶えず究極の問いを発し続けられる人ですね。最後の瞬間まで答えの出ない職業ですから」と笑顔で答えてくれました。
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原田博植様プロフィール
データサイエンティスト/株式会社グラフ 代表取締役
リクルートにてデータサイエンス組織を立ち上げ、同社初のチーフ・データサイエンティストに就任。2015年に日本経済新聞社データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞。経済産業省「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」委員
Text:Hiroshi Ishida
※掲載元の許可を得て掲載しております。
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